海野雅威『I Am, Because You Are』

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大ケガから奇跡のカムバックを果たした実力派ピアニスト。曲・演奏・録音の3拍子が揃った、ピアノ・トリオの新定番となる傑作が誕生。

海野雅威『I Am, Because You Are』UCCJ-2223
メーカーコメント

●ハンク・ジョーンズやジミー・コブなどのレジェンドに愛され、ロイ・ハーグローヴ・クインテットで日本人初、最後のレギュラー・メンバーだった、ニューヨークを拠点に活動する実力派ピアニスト。
●2020年9月に新型コロナウイルス蔓延によるアジア人ヘイトクライムの犠牲となり、NYの地下鉄構内で集団暴行に遭遇。ピアニストにとって致命的と言える右肩骨折などの重傷に見舞われたものの、不屈の精神と懸命なリハビリで奇跡の復活。2022年3月に発表された復帰作『Get My Mojo Back』は、坂本龍一氏が「抒情的でありグルーヴィーでもある。何と言っても過酷な状況を乗り越えて、真に演奏する喜びに溢れているアルバムだ。」とのコメントを寄せるなど、生命力と歓びに満ちた内容で、ジャンルを超えて幅広いリスナーにアピールしました。
●復帰第2弾となる本作は、大ケガの際に支援のためのクラウドファンディングを立ち上げるなど、多大なサポートをしてくれたダントン・ボーラー(b)とジェローム・ジェニングス(ds)とのレギュラー・トリオによる作品。前作同様、全曲、海野雅威のオリジナル曲で構成。深い信頼関係に基づいたレギュラー・トリオならではの以心伝心のインタープレイが大きな魅力です。
●数多くのジャズの歴史的名盤が生まれた聖地、ニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオにて録音。海野は名匠ルディ・ヴァン・ゲルダーが生涯最後(2016年)に録音したピアニスト。今回はルディ唯一の弟子であるモーリーン・シックラーが録音を担当。ブースに入らず同じ部屋で編集のきかないライヴ感を大切に録音。トリオの一体感や天井の高いスタジオの自然な響きを捉えている。さらに、これまでにグラミー賞を11回獲得している名エンジニアのジム・アンダーソンがミックスを手がけました。

ジャズ担当、おすすめコメント

Verve / Universal Music からの2作目は、共演を重ねるレギュラーメンバーによるピアノ・トリオ作品。シンプルな演奏フォーマットですが、実に多彩な演奏を聴かせてくれて、新しい世界ステージの中で、のびのびと自己表現をしているように感じます。
いきなり8ビートでスタートする①「サムホエア・ビフォー」からして、爽やかな日差しが入ってきます。この音の感覚は清々しくて良いですね。
以下、気になった曲を少しだけメモすると・・④「シダーズ・レインボー」は亡き名ピアニスト、シダー・ウォルトンに捧げます。曲の冒頭で「虹の彼方に」を引用し美しい思いを伝え、その後の疾走感・スイング感はジャズの醍醐味を伝えるもの。⑦「プット・ザット・シット・イン・ダ・ポケット」はロウダウンなブルース。どっしりと骨太なリズムの中で弾かれる、粘りのあるピアノがかっこいい。⑧「オーヴァー・ザ・ムーン」は、跳ねるドラムと、可愛らしいメロディが耳に残ります(私、ずっと聴いていたいかも・・)。最後の⑪「オータム・イズ・ヒア」はピアノソロ。静かな感覚を残しながら、美しさ優しさを表現します。

演奏する楽しさ、ジャズに対する思いが各曲からじわっと伝わってきます。全ジャズファンへ、「ぜひ」とおすすめしたい作品です。(神尾)

演奏者・曲目

海野雅威(p), ダントン・ボーラー(b), ジェローム・ジェニングス(ds)
1. サムホエア・ビフォー
2. アフター・ザ・レイン
3. ユージーンズ・ワルツ
4. シダーズ・レインボー
5. ワン・ウェイ・フライト
6. C. T. B.
7. プット・ザット・シット・イン・ダ・ポケット
8. オーヴァー・ザ・ムーン
9. レット・アス・ハヴ・ピース
10. アイ・アム、ビコーズ・ユー・アー
11. オータム・イズ・ヒア

2023年3月3日、4日、ニュージャージー、ヴァン・ゲルダー・スタジオにて録音

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