売場から見た、ビル・エヴァンスの名盤①

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当社の「ザ・定盤」でもある『ワルツ・フォー・デビイ』(1961年録音)って、本当に途切れることなく売れるアルバムです。録音から60年を経ても、売場の販売チャートをチェックすると、チャートインするのはよくあること。。デビイをイメージした?雰囲気のあるジャケット、そして何よりもタイトル曲の持つ愛らしいメロディが人気です。エヴァンスが、スコット・ラファロ(ベース)、ポール・モチアン(ドラム)と組んだ、通称「ファースト・トリオ」による現役感のある名盤です。

ワルツ
▲山野楽器が選定した名盤、「ザ・定盤」のシールの付いた『デビイ』

同じメンバーによる『ポートレイト・イン・ジャズ』(1959年録音)。こちらは「枯葉」の演奏で知られる名盤。ジャケットのエヴァンスの表情、あの眼鏡にネクタイ・・いかにもモダンな雰囲気が漂います。

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▲『ポートレイト・イン・ジャズ』の初期ステレオレコード、この表情もいい。上部に赤いステレオ表記が入ります

「ファースト・トリオ」による公式なアルバムは、わずか4枚。自在な発想でエヴァンストリオを発展させたベースのスコット・ラファロが、『ワルツ・フォー・デビイ』録音の11日後(1961年7月6日)に交通事故で亡くなってしまうのです。
そして、その4枚のうちの他の2枚は、『エクスプロレィションズ』(1961年録音)と、『サンディ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(1961年録音)です。言うまでもなくモダンジャズの名盤ですが、売れ行きからすると非常に大きな差があります(あくまでも売れ行きですので・・)。

当売場の販売比を調べたら
『ワルツ・フォー・デビイ』
『ポートレイト・イン・ジャズ』
『サンディ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』
『エクスプロレィションズ』が

17:4:3:2 という・・分かりやすいのか、分かりづらいのか?な比率ですが、『デビイ』が圧倒に売れるという結果になります。

『エクスプロレィションズ』はトリオの貴重なスタジオ録音。『サンディ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード』は、実は『デビイ』と同日同所でのライブ。ジャケットにフィーチャリング、スコット・ラファロと記され、事故死したベーシストへの追悼盤でもあります。同日録音なのに『デビイ』とは違うトリオの少しハードな一面が感じられると思います。

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▲『サンディ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』、「ザ・定盤」のシール付き。
『エクスプロレィションズ』は生涯の愛奏曲「ナーディス」を収録

で、先に公式に4枚としましたが、2002年に『ワルツ・フォー・デビイ(完全版)』という作品が発売になっています。『デビイ』が収録された、1961年6月25日のヴィレッジ・ヴァンガードでのライブを集大成した3枚組です。なんと演奏途中に停電!があり(演奏は進むものの)機材が止まり無音の部分があったり、日曜日で観客が少なくまばらな拍手など・・ジャズ史に残る伝説のライブの内側が垣間見れるCDです。

しかし、しかし、、聴いて改めて凄いと思うのは、この「ライブの記録」から、ストーリー性の高い『デビイ』、『サンディ』を生み出すプロデューサー、オリン・キープニュースの構成力です。例えば『デビイ』は、なんとも静かな「マイ・フーリッシュ・ハート」がオープニング曲、一転して明るくピチピチするタイトル曲へ、そして「デトゥアー・アヘッド」へ、しんみりした曲流れも息を飲みます。
この前後の流れがあると、各曲の聴こえ方が違ってきます。やはりディスクで通して、構成も味わうべき音楽であると・・CD売場目線では思うのです。

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▲児山紀芳『ジャズ・ジャイアンツの肖像』(絶版)。貴重な1971年のエヴァンスへのインタビューを収録。
その中でデビイは録音時3歳だった、エヴァンスのお兄さんの娘さんだと明かしています

ちなみに現行のCDはボーナストラック入り。取りあえずボーナストラックはボーナスとして楽しみ、本来の曲順で聴いてみてください。エヴァンスの音楽魅力をより感じるのではないかと思いますよ。

(2021年7月9日記 山野楽器 noteより修正・転載 神尾 孝弥)

※一部、限定盤・輸入盤等もご紹介しています。入荷が不安定になる作品もございます。品切れ等の際はご了承ください。

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