寺島レコード『JAZZ BAR』と私

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こんにちは、ジャズ担当の神尾です。
いきなりですが、毎年末に出るコンピレーションCD、寺島靖国プレゼンツ『Jazz Bar』って、本当に人気のシリーズです。2001年12月に、第1作『Jazz Bar 2001』が出て(当時のディスクユニオン、DIWの制作担当、Nさんが営業に来ていたのが懐かしい)それ以降、毎年リリースされる・・に、とどまらず、『For Jazz Vocal Fans Only』、『For Jazz Audio Fans Only』と派生し、「ベサメムーチョ」だけを集めた『All About Besame Mucho』などの番外編。さらに寺島レコードというレーベル名のもとに、アレッサンドロ・ガラティらのアーティスト新録も手掛けるようになります。(7/1現在)売場のカタログで寺島レコードを検索すると、何と110作がヒットします。これってすごいことですよね。

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▲ずらっと並ぶ、寺島レコードの棚。

『Jazz Bar』の第1作が出た2001年は、新世紀を迎え、インターネットなども普及しだして情報が早く、しかもダイレクトに伝わるようになってきた時期といえるでしょうか(私自身も2001年に、銀座の売場でジャズ担当になりました)?
ジャズCD業界も同様に、フレッシュサウンド、クリスクロス、レザヴォア、Mons、YVP、TCB、シャープナイン、スプラッシュなどなどのジャズレーベルや、輸入盤を取り巻く環境も発展しながら盛り上がっていた時代です。

国内では、澤野工房が1999年12月に、ウラジミール・シャフラノフ・トリオ『ホワイト・ナイツ』(AS-1)を発売。以降、ガッツプロダクションが、2001年10月にシンプル・アコースティック・トリオ『ララバイ・フォー・ローズマリー』(GPTS-1)。2001年11月には、スパイスオブライフがスイート・ジャズ・トリオ『ベリー・スウェーディッシュ』(SOLJ-1)をリリースしています。

それまで、ジャズ的には少し遠い国だった、フィンランド、ポーランド、スウェーデンといった国の音源が、個性のあるマイナーレーベルを通じて広く一般のCD店に入ってきた時期だったと思います。
『Jazz Bar』は、それらの馴染みの少ないジャズを、ジャズ喫茶「メグ」の好奇心旺盛、辛口店主でもある寺島さんが、独自の美学を持って紹介しています。それは新しいジャズを聴きたいファンや、ジャズ・オールドファン。(おしゃれなジャケットに惹かれて手に取っていくような)ジャズ以外の音楽ファンも巻き込みヒットしていたように思います。

ちょうどその頃、寺島さんの「メグ」では、ジャズファンが集って行われる、レコードコンサートが頻繁にありました。私もちょくちょくお邪魔していたのですが、本当に一般のファンの方(といいつつ、よく岩浪洋三さんがいらしてた)が、演奏者の有名無名を問わず、自分の気に入ったCD・レコードを持ってきて、そのどこが気に入ったのか話をしながら披露していきます。自分がいいと思ったものを(強引でも、何でも)どんどん紹介する。これってすごく面白かったです。私自身ジャズの聴き方が変わったし、ジャズを聴く幅が(少しですが)拡がったように思います。

当時の『Jazz Bar』には、そんな会に誰かが持ち込み、私自身もその場で聴いたことがある曲がたくさん入っています。寺島さん自身もライナーで、レコードコンサートの様子を書いていたりして(例えば『Jazz Bar 2004』)、読み直して懐かしくもあったりします。

その後、DIWの制作担当は何人か変わりながらも、『Jazz Bar』のあり方は変わっていません。
ちなみに
『Jazz Bar 2002』のオビには「八面玲瓏 70分の快楽メロディー」
『Jazz Bar 2003』は「メロディー道楽 リズム沐浴 ジャズ三昧 贅沢盤第三弾!」
『Jazz Bar 2021』は「演奏も大事ですが、誰もがわかるものではありません。一方、曲の良し悪しは誰しもがわかるのです。」
と書かれています。曲=メロディーに対する、こだわりは見事に変わりませんね。

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▲『Jazz Bar』2002年、2003年。オビのコメントに注目。
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▲このオビの文言は寺島さんらしさ120%。氏の思いが溢れます。

私が一番好きな『Jazz Bar』は2004年のものです。
ナホルニー・トリオから始まり、一転、すがすがしいテナーのトニ・ソラ、山中千尋さんのスタンダード。さらに、ジャネット・サイデルへと繋がっていきます。後半のランディ・ポーター、マリー・ルイーズ・クヌートソンの明快なスイングも、私のジャズ趣向にぴったりです。

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▲私、お気に入りの『Jazz Bar』は、この2004年版。
シリーズがたくさんあって選べないという方に、いまでもおすすめしています。

最新作『Jazz Bar 2021』のライナーノーツには、私のことが出てきます。詳しくは読んでいただいてのお楽しみ?ですが、澤野工房から発売されたセルジュ・デラートについて、私がそのアルバムの中で3番目にいいと紹介した曲を、寺島さんはそれがベストワンだとして『Jazz Bar 2021』収録しています。私はいまでも、このアルバムのベストはあちらだと思うのですが・・いかがでしょうか。
 
にしても・・寺島さんの個人的趣味を丸出しにしながら、多くのファンを巻き込んでいく『Jazz Bar』。面白いですね。ジャズCD界「冬の風物詩」ともされるシリーズ。今年も楽しみに待っていようと思います。
 
と・・締めようと思ったら。この原稿を書いている間に人事異動がありました。私、神尾のジャズ売場、販売担当はここで一区切りとなります。今後はECサイトの部門で、ジャズを担当することになりました。
また、機会があればnote は書いていきます。今後とも「山野楽器のジャズ」を、どうぞよろしくお願いいたします。

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▲6月のある日、アフターアワーズの売場にて。

やっぱりジャズが好きだなぁと思う(神尾 孝弥)(2022年7月8日記 山野楽器 noteより修正・転載)

※一部、限定盤・輸入盤等もご紹介しています。入荷が不安定になる作品もございます。品切れ等の際はご了承ください。

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