自然体のピアノソロ 渋谷毅『カーラ・ブレイが好き』(一部、菊地雅章の作品も)について・・
自然体の巨匠、渋谷毅、15年振りとなる待望のソロ作品!
タイトルの通り、好き!というカーラ・ブレイ(と縁の曲)が8曲中6曲。それは自身が語る通り、選曲も演奏も“自分らしく、今の姿そのまま”というものとなった。しかし、渋谷毅の自然な表現はいつものことながら奥深い。
新曲として取り上げた、カーラの代表曲Lawnes、Ida Lupino。その演奏はトツトツとしてシンプルな表現ながら、まるで夢に迷いこんだように美しく、日々の雑多なものを魔法のように消し去り、騒がしい空気さえも一変させてしまうようだ。
一方、自身のオーケストラで演奏し続けてきたM4、M6の胸に迫る哀切感、そこから連なるゴスペルの精神が響き渡るM7、またラストへの展開はドラマに満ちあふれる。“通り過ぎた時間”と題されエンディングとなった新たなオリジナル。これは子供のための曲も数多く作曲してきた渋谷毅らしく、童心を思い起こさせるような優しさがにじみ、また、それぞれの人の中に流れる時間にそっと寄りそう。
高校時代の同級生で、生涯リスペクトしあった菊地雅章の名曲“リトル・アビ”の演奏を含め、淡々と、しかし“音の間のすみずみ”まで豊かな情感をたたえた一作。時を経てもあせることのない美しさにつつまれます。
昔からのジャズ仲間に推薦されたピアノソロ作。どの曲もゆったりしたテンポがあって、あたたかくとても優しい。全ての曲がひとつに繋がっているようにも思えます。渋谷さんはブックレットで、カーラ・ブレイの音楽について「(エリントンの音楽より)もっと身近にあって・・」(抜粋)と記します。聴き手の琴線に上手に触れつつも、突飛だったり、トリッキーな感じはしないですね。そして、調べると⑤「Little ABI」は、菊地雅章の曲なのですね。いや、それはもはや関係ないかも・・慈しむように弾かれる渋谷さんのピアノ世界、少し大きな音で浸ってみてください。15年ぶりのソロ作品になります。(ジャズ管理人)
渋谷毅(p)ソロ
1. Lawns
2. IDA LUPINO
3. Sing Me Softly Of The Blues
4. Utviklingssang
5. Little ABI
6. Soon I Will Be Done With The Troubles Of This World
7. The Lord Is Listenin’ To Ya Hallelujah
8. 通り過ぎた時間